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床暖房はホットカーペットではありません。

 ここでは、今までの施工現場での実体験から、床暖房に対するありがちな誤解を説明してみたいと思います。

 

 その前に床暖房の快適さについて簡単に説明してみます。寒い時期に床暖房の試運転に行くと、みんなお尻に根が生えたように動かなくなることがあります。「気持ちいいね・・。」

 

 ではなぜ気持ちがいいのか?それは「輻射」という熱の伝わり方にあります。輻射熱とは、空気を媒介せずに直接からだを温める赤外線のことです。陽だまりのような暖かさとよく表現されますが、冬の気温の低い日でも、日光に直接あたると暖かく感じる、あの暖かさです。輻射熱はまず床板や壁などものを温めます。そこから伝わるほんわかした熱が床暖房独特の暖かさの正体です。

 

 このときの部屋の温度分布が特徴的です。床上15センチくらいに暖かい空気の層ができています。25℃~30℃くらいです。しかしそこから上は20℃以下です。普通、空気を暖めるエアコンなどでは20℃を切ると肌寒さを感じますが、床暖房は足元が暖かいので、むしろ上は少し寒いくらいでちょうどいいのです。頭寒足熱とはこのことです。

 

 これはホットカーペットとは違います。ホットカーペットの熱の伝わり方は「伝導」といって、カーペットの発熱体に触れて、その熱が直接伝わってくることを指します。だからホットカーペットは人が乗っている、その上だけが暖かければいいのです。しかし床暖房はそもそも暖かさの伝え方が違うので、本来は床面積の80%以上に敷設したほうがよいといわれています。床下や壁も放熱を防ぐために、断熱されていることが、設置条件として挙げられます。これはどんな床暖房であろうと、その気持ちよさを実感するためには外せない原則です。

 

 しかし私はこれまで何人もの大工さんや設計士からコスト削減のために同じ場所のパネルを減らしてほしい、と言われました。

どこだと思いますか?

それは、キッチンの通路です。

「人が立つ流し台の前にはパネルを入れて欲しいが通路は人が通るだけだから無駄だ」と言うのです。

 これは発想が床暖房ではなく、ホットカーペットです。

 

 つながっている一続きのフロアにパネルを入れない部分を作ると、床上の温度がどうしても低くなります。そうするとパネル上の暖かい空気とパネルのない床上の冷たい空気が対流を起こしてしまい、暖かい空気が床上に留まってくれません。足元の体感温度も下がるので、熱源を過剰運転させてしまい、結果的に燃費も悪くなるということになります。

 

 要するに床暖房は戸で仕切れない空間はワンフロアとして、なるべく隅々までパネルを敷くことが正しい設計なのです。テレビ台もキャスターがついていて、5センチくらい床から浮いていれば、その下にパネルを敷いても問題ありません。

 とにかく床暖房はパネルをたくさん敷いて、なるべく低い温度で運転するというのが基本なのですが、こうしたことはメーカーの講習などを受けないと知らない人も少なくないのです。お客さんは当然そんなこと知りませんから、床暖房とホットカーペットの違いの分からない人に工事を頼んでしまったら、悲劇です。

 

 せっかく高いお金をだしても、不満が残ります。「床暖房って高い割りに、たいしたことないな」と床暖房そのものに幻滅されてしまうと、その方は当然ですが、周囲にも床暖房に対する悪い印象が広がってしまう。これは床暖房そのものが悪いわけではなく、設計・施工の問題なので、とても残念なことです。

 

 もう一つ気になるのが、パネルの敷設面積を減らす言い訳として、「最悪の場合、エアコンもあるし、それを補助暖房に使ってもいいから・・・。」というのがあります。これも仕組みを理解していれば、簡単には言えない言葉です。繰り返しますが、床暖房は輻射熱だから気持ちがいいのであって、空気を暖めるエアコンとの併用は本来の床暖房の良さ(頭寒足熱)を打ち消してしまいます。

以前、床暖房と薪ストーブとエアコンを同じ部屋に施工したお宅がありました。

現場監督が「暖房が三つもあるから、どんな寒い冬でも大丈夫!」とはしゃいでいましたが、その言葉が一番「寒かった」記憶があります。

 

 とはいえ既築のリフォームで床暖房を入れる場合は、断熱性能に限界があるので、パネルをしっかり敷いても、寒く感じる日もあると思います。年に数日しかないそういう最低気温の日にはエアコン併用もやむなしだと思いますが、最初から床暖房単独で熱量が足りないような設計は、ナンセンスです。最近は窓の内側にもう一つ窓を取り付けるインナーサッシが流行っています。床暖房をするのなら、こうした断熱工事は、本来一緒にすることが望ましいと思います。

 

 床暖房の種類はたくさんありますが、どんな工法を選択するにせよ、

①同一空間内では敷設面積を最大にする。

②床、壁、窓をしっかり断熱する。

これが、大原則です。

その上で、メーカーや販売店の営業トークだけでなく、いろいろな工法を学んだり、複数の専門業者に相談されることをオススメします。でも実際に何年も使っている人の声はやっぱり一番参考になりますね。

賢い選択で、快適な床暖房のある生活をお楽しみ下さい。

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